NISA制度はどう変わる?NISA恒久化に向けて自民党が議論開始

つみたてNISA 世の中の動向

5月16日に自民党の金融調査会は岸田文雄首相にNISA制度の恒久化を提言し、道筋をつけるという路線を党から打ち出すことに了解を得たとのことです。

NISAの恒久化を 自民調査会が首相に提言(日経新聞)

あらためてNISAの概要

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。
NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。
したがって、NISA口座で運用すると、投資で得た利益がそのまま自分の利益になります。

下の例で、利益が10万円出た場合に、NISA口座以外の口座(一般または特定口座)を利用すると、
発生した利益を受け取る際に、20.315%の課税が発生するので、10万ー2万315=7万9千685円を受け取ることができます。
一方、NISA口座の場合は、非課税のため発生した利益=手取りとなり、10万円をそのまま受け取ることができます。

NISA非課税

リスクを取って得た利益なので、税金が取られないのは素晴らしい制度

名前の由来は、イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という名称になりました。

NISAには、「一般NISA」、「つみたてNISA」の2種類あり、併用はできません
投資スタイルにあわせて、自分に合う口座を選ぶ必要があります。

一般NISA

一般NISAは、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できる。

一般NISA口座の非課税投資枠は、年間120万円までとなっていて、その投資枠の範囲であれば、対象となっている金融商品であればいくつでも購入できます。また、1回だけでなく複数回に分けて購入することもできます。1回で使い切る必要はありませんし、枠を全て使い切らないといけないということもありません。そしてその枠内で投資を行って得られた収益は最長5年間、非課税となります。5年間でトータル最大600万円(=120万円×5年間)までの投資元本から得られる収益について非課税となります。

一般NISA運用

なお、一般NISAは2024年から制度が変更になり、

・非課税投資枠が122万円に変更
・2階層なり、1階部分が20万円のつみたてNISA商品枠、2階部分が現行の一般NISA商品枠

となります。ややこしいですね。。。

つみたてNISA

つみたてNISAでは、毎年40万円を上限として一定の投資信託が購入でき、最大20年間非課税で保有できる。

つみたてNISAは、NISAの利用状況をうけて、少額から積立で投資できることが十分浸透していないことがあると考えた金融庁が、分散投資(投資対象の分散と投資時期の分散)により、中長期的に安定的なリターンの実現が可能になるよう設計された制度です。年間投資上限額は40万円です。

つみたてNISA運用

なお、創設時のイメージは、年間投資上限額60万円、非課税期間20年でしたが、毎月の平均貯蓄額が3万円前後だったため、上限額40万円となりました。

つみたてNISA運用構想

つみたてNISA制度イメージ(金融庁 平成29年度 税制改正要望項目)

恒久化の内容

NISAの恒久化と聞くと、思い浮かべるのは2つです。

①投資可能期間の恒久化
②非課税期間の恒久化

投資可能期間の恒久化

国(金融庁)が以前から要望に掲げているのは「投資可能期間」なので、当面の議論もこちらになると思います。
つみたてNISAは制度の終了に伴い、「投資可能期間」をフルに使えない可能性がありますが、

非課税期間の恒久化

一般NISAでは5年、つみたてNISAでは20年が非課税期間として定められています。
投資家としては、上記「投資可能期間の恒久化」とセットで考えてほしいところです。
ただ、それぞれ非課税期間が異なるため、簡単に進まない気がします。

そもそもNISAの本家、イギリスの「ISA」の制度はどうなっているのでしょうか?

本家ISAとの違いは?

ISAは、Individual Savings Accountの略称で、株式型、ジュニア型、預金型等6つのタイプが存在します。
英国ISA統計によると、ISAの口座開設者は2,015万人と、18歳以上人口の38.2%で(2019年4月5日時点)、残高は6200億英ポンド/約83兆円(2020年4月5日時点)、投資(拠出)額は2019/2020年度に前年度比+10%の756億英ポンド/約10兆円である。
日本に比べると随分進んでいる感がありますが、その理由を日本の制度と比較しながら確認しましょう。

ISAとNISAの比較

Stocks & Shares ISA(英国) つみたてNISA(日本) 一般NISA(日本)
利用可能対象者 18歳以上の居住者 20歳以上の居住者 20歳以上の居住者
非課税対象 株式・投信・債券・保険等の利子、配当、譲渡益等 金融庁が認定した投信・の配当、譲渡、分配益等 株式・投信・の利子、配当、譲渡、分配益等
非課税枠 年間上限 2万英ポンド/約300万円 年間上限 40万円 年間上限 120万円
投資可能期間 恒久 最長20年(2042年まで) 最長5年(2023年まで)
非課税期間 無期限 最長20年 最長5年(ロールオーバーあり)
途中売却 自由(年度内の資金引き出し・再拠出可 自由(年度内の資金引き出し可・再拠出不可 自由(年度内の資金引き出し可・再拠出不可

管理人の考え

個人的にはNISA恒久化と拡充を期待したいです。具体的には、

・投資可能期間の拡大 ・・・ 金融庁の要望通り、恒久化
・非課税期間の拡大 ・・・ つみたてNISA 20年 → 40年、 NISA 5年 → 10年
・非課税額の拡大 ・・・ つみたてNISA 40万 → 60万、 NISA 120万 → 180万
・高齢者への配慮 ・・・ 相続ISAのような制度創設

とはいえ、本家ISAも最初から2万英ポンドだったわけではなく、ISA創設時の1999年は7,000英ポンドで、少しずつ投資可能額を引き上げていきました(非課税期間は創設当初から無期限)。

しかし、一度も買付が無かったつみたてNISA口座が32%であることを考えると、非課税枠の拡大は影響を受ける人が限定的で、現実的ではないかもしれません。
それでも、少額から投資を始められるように投資可能期間の拡大は早く実現して欲しいと願います。

日本も本家と同じように、

投資可能期間、非課税期間の恒久化 → 非課税枠の拡大 → 一般NISA、つみたてNISA一本化して、年間上限額120万で投資可能期間と非課税期間を恒久化出来るようになれば、将来の資産形成も早くなると思います。
仮にこれらが無理だったとしても、
・売却分の再投資可
・残っている非課税投資枠を年を跨いで合算
等やれることはあります。

なお、NISAの拡大に関しては、過去にも2016年、2018年、2019年に検討されましたが、「富裕層への優遇」という意見等で見送りされています。

NISA恒久化議論は始まったばかりです。今後、どのような決着となるのか見守りたいです

 

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