楽天・オール カントリーの特徴 eMAXIS Slimとの違い

地球2 資産形成

 はじめに

 楽天投信が新NISAに向けて打ち出した低コストインデックスシリーズである楽天プラスの「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」(以下、楽天オルカン)の月次レポートが公開されました。

楽天・オールカントリー月次レポート(2023年12月)
※記事をまとめている間に2か月目のレポートが公開されました。

目論見書には、マザーファンドにおいては、ETF(上場投資信託証券)や先物取引を利用することがあるとの記載があり、実態がどうなっているのか気になっていました。

レポートを確認する前に、楽天オルカンがどのようなファンドなのか確認していきましょう。

 楽天オルカンの概要

楽天オルカンは、楽天+(プラス)シリーズの一つで、2023年10月27日設定と未だ運用を開始したばかりの新しいファンドです。

基本情報は以下の通りです。
また、2023年時点で最も純資産額が多いeMAXIS Slimオール・カントリー(以下、Slim オルカン)と比較しました。

ファンド名 楽天・オールカントリー eMAXIS Slim 全世界株式
(オール・カントリー)
設定日 2023年10月27日 2018年10月31日
運用形態 インデックスファンド インデックスファンド
投資形態 ファミリーファンド ファミリーファンド
ベンチマーク MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み)
販売手数料 なし なし
信託報酬 0.0561% 0.05775%
信託財産留保額 なし なし
純資産総額 421億円 2兆2768億円

ベンチマークはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス [ACWI]で日本を含む先進国、新興国の株式に投資します。

日本株式、先進国株式、エマージング(新興国)株式と地域別の3つのマザーファンドを介して全世界の株式に投資します。

楽天オルカン目論見書1

見たところ、

 それではレポートを確認していきましょう。

月次レポートの分析

今回の分析対象である楽天オルカンの月次レポートを確認します。

楽天オルカン月次レポート1
出典:月次レポート

 運用2か月目ですが、インデックスと比較した差異は-0.4%(インデックス1.7%、楽天オルカンが1.3%)、この程度であれば許容範囲でしょう。

 ちなみにSlim オルカンの1か月騰落率差異は-0.2%(インデックス1.7%、Slim オルカンが1.5%)でした。

次に投資状況を確認します。

楽天オルカン月次レポート2
出典:月次レポート
目論見書に記載がある通り、投資状況の説明から3つのマザーファンドを通じた運用であることが分かります。
このなかで、新興国株式が10.4%の比率であることを覚えておいてください。

次に組み入れ銘柄を確認します。

楽天オルカン月次レポート3
出典:月次レポート

 すぐ気づくと思いますが、組み入れ銘柄は、iShares Core MSCI Emerging Markets ETF(IEMG)がトップとなっています。IEMGは経費率0.09%のブラックロックが運用するETFです。

 ここから、楽天オルカンは日本株と先進国は概ね現物株運用で、新興国株はETF運用がメインであることが推測できます。楽天投信がオルカンを現物運用できるかは半信半疑でしたが、現状は出来ていません(将来的に新興国ETFが現物に切り替わる可能性はゼロではありませんが)。

 楽天オルカンの信託報酬は年0.0561%です。そのうち7.8%に相当する額が0.09%の経費率のETFを用いていることになります。そして、この0.09%のETFのコストは信託報酬の枠外で発生する費用となります。ETFのコスト 0.09% x 7.8% = 0.007%程度の費用はファンドが負担する事になります。

 したがって、信託報酬だけ見るとSlimオルカンより低くなりますが、楽天オルカンは現物株とETFで運用するため、総コストはSlimオルカンを上回る可能性が高いです。

 また、Slimオルカンは純資産総額2兆円を超えており、純資産総額が大きくなるほど、信託報酬率が段階的に低くなる構造です。
純資産総額が大きいと規模の経済により諸経費の全体に与える影響が極めて少なく、結果として実質コストが低く抑えられます。
そう考えると、現時点でSlimオルカンのほうが優れていると考えます。

 それ以外にも、楽天オルカンはベンチマークとなるインデックス指数が配当込みと記載されていない点も気になります(おそらく分配金を出さずにファンド内で再投資すると思いますが)もし、配当金を出す場合は複利効果が下がってしまいます。

 また、楽天オルカンは楽天ポイントというポイント還元がありますが、ポイント還元の変更には金融庁への届出が不要で販売会社(=楽天証券)の一存でいつでも減額したり廃止したりできます
楽天グループは業績悪化の影響でポイントプログラムが頻繁に変更された経緯もあり、今後見直しが入る可能性も否定できません。長期運用を前提としたNISAという制度で活用するには、楽天オルカンは選びにくいと思います。

ポイントはおまけ程度に捉えたほうがよいでしょう

まとめ

昨年10月に新設された楽天オルカンの直近成績とSlimオルカンのどちらが良いのかについて書きました。要点は以下の通りです。

  • 楽天オルカンは、新興国への投資の大半がETFによる運用
  • 楽天オルカンは見た目の信託報酬は最安値だが、ETF運用の分だけ実質コストが上がる可能性あり。
  • 楽天オルカンは保有残高に対してポイント付与がある点は魅力的。ただし純資産額が小さく対象インデックスは配当を含まないため運用によってはリターンが小さくなり可能性あり。

最後に、楽天オルカンは設定から3カ月程度という事もあり、ベンチマークとの乖離(または実質コストの増大)が見られます。この状況が続くようでは厳しいですが、今後の運用結果を注視したいところです。

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